speak fondly.....? 01

「…めはら…」

「…ゆめはら…」

「…夢原のぞみっ!」


「…はいっ!?」

りんの無言の救助虚しく、教科書片手にココに詰め寄られた時にはあちゃー、と額を叩いた。いくらココがのぞみに甘いからと言って、注意されるのはこれが初めてではない。さすがに怒られないわけはなかった。


「…お目覚めですか?夢原さん」

「…ココ…田先生…」

微妙にきつい声の教師を情けなそうに見上げる。


「…すみません…」


「よろしい。じゃあ次のページから音読してもらえますか?」


「…はい」


肩を落として立ち上がる幼なじみと我が国語教師を交互に見返し、りんははぁとため息をついた。

 

 


「…最近、授業中よく寝てるよね」

来るとは思っていたが、ナッツハウスに来て開口一番に言われてしまった。

「…ごめんなさい」

しょげるのぞみを見てその場の全員がまずい、という雰囲気を感じ取ったらしい。

「夜遅くまで起きてる?」

「そっ…うじゃないよ。ちょっと疲れちゃって…」


「…そうそう!たまに眠い時期ってあるよねー。最近寒いしさー」


「ですよねー。私も最近眠たいですっ」


必死に話題を逸らそうとするりんとうららに混じって、こまちとかれんも顔を見合わせた。

 


怪しまれないようにいつも通りの時間にナッツハウスを後にして、こまちが聞いた。

「…勘繰られるほどなの?」


「頑張るのもいいけど、こういうことはちゃんと両立しなきゃだめでしょ、のぞみ」


「…はい。ごめんなさい、かれんさん。…こまちさんも…」

情けなそうな表情になるのぞみに、りんが微笑んで肩をまわした。

「…まあまあ。頑張んなよ、のぞみっ」


りんが微笑む。うららもこまちもかれんも、ふふっと笑う。
その中心で、のぞみが照れくさそうに、にっこりと笑った。




「…随分出来てきたわね、のぞみさん」
 

日曜日の午後、今日はナッツハウスに6人だけだ。シロップは配達、ココは珍しく学校に行っているし、ナッツは隣町のショッピングモールに出掛けて行った。


「はい…でもここからまたちょっと難しくて。りんちゃん、ここ、どうやって…?」

「ああ、そこは…」

「みんな、おまたせー!」

紅茶をいれかえて、階段をのぼってくるくるみ。彼女を手伝いにうららが立ち上がり、テーブルの上に1つだけ手付かずになっているケーキを見て微笑んだ。

「…本当に頑張りますね、のぞみさん」

「うん…えへへっ」

紅茶のおかわりに、お菓子に初めて気付いたようにのぞみがテーブルに手を伸ばした瞬間、ナッツハウスのドアが開いた。


「ただいまー!」


「…っえ!?」


のぞみがぎくりと手をとめ、階段の方を凝視した。
りんがガタッと椅子から立ち上がった。

「ちょ…なんで!?まだ帰らないんじゃ…」


「…そういえば、今日はナッツがいません!」


「そうだわ…いつもはナッツがココの帰る前に教えてくれていたからっ…」

「くるみは気配察知できなかったの!?」


「…普通の国民はそういう力は弱いのよ!国王であるお二人が特別に強いの!」

「のぞみさんっ…早くそれっ…!」


間一髪、のぞみが自分の鞄にそれを滑り込ませた瞬間、ココがひょっこり顔を出した。


「おっ…かえりなさい、ココ様っ…!」

「…お…邪魔してます…」

「ココ…の分もケーキ、あるわよ…」

「あーっ!私、ココ様の分も紅茶いれてこなくちゃ…っ!」

「あっ…わたしも手伝いますー!」


6人全員が一通り不審な動きをしてくるみとうららが台所に消えた後、ココがいつもの席について、不思議そうに尋ねた。

「なんか…あった?」


「べっ…つに…なんにもないよ?しゃべってただけだよね?」


りんが振り返ると、他のメンツもそうそうと首を振った。


「…そう?」

不思議そうに首をかしげるココにただ笑いかけるしかないのぞみを、ココが逆に見つめ返した。

 

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